「音楽家のための確定申告講座」(第8回特別講座「若手音楽家のためのキャリア展開支援」)

8.【質問コーナー】

~質問がある方はぜひ積極的にどうぞ。~

質問(学生1):《声楽科で修士課程です。食事代等は経費で落ちますか?》
先生:それは落ちる時もあります。あとは、どこまで証明できるかというところにかかってくるという感じにはなりますが・・・

(学生1):それはどうやったら証明できますか?

先生:証明は基本的に記録しかないんです。経費の元々の概念として、売り上げや収入を得るための出費なんですよ、ということを記録しておくということですね。

例えばここで私が、レストランで誰かと食事をして私が食事代を払ったとします。これがもし売り上げを得るために、プロダクションの社長さんとか、これから仕事をしていただきたい方との食事だとすると、直接売り上げを上げるために、これは経費で落ちるパターンです。

そしてこのパターンの時に、“誰と、どういう目的で、どうして食事をする必要があったのか“みたいなことを、記録しておくんです。自分でも何年か経ったら忘れちゃいますからね。

話を元に戻して、さっきとは逆に、極端に一番落ちないケースを言うと、同じレストランで全く同じもの・コース・セットを頼んだとしても、「うまかったなぁ~昨日のご飯」といって、次の日奥さんと行ったとしたら、売り上げには全然関係ない話となります。奥さんと食事をしたとしても、後日税務署が来て、「俺がこうやって皆の前で声を張って、確定申告講座なんていう活動をしていられるのも、奥さんが健康的な食事を作ってくれて、励ましてくれて、今日もがんばってねと言ってくれるので、精神が満たされて、結局収入が上がってるんです。」と言えなくはないですよね。でも関連性の遠い話ですよね。

なので、こういうケースだと、経費としてはかなり落ちにくくなってくるんです。

この距離が、奥さんだと遠いので、もう少し近い人とか、学部の同級生だったとして、「一緒に食べに行こうか」となると、微妙な話になります。

「昨日のテレビ見た?すごかったねー」と言う日常会話だけの食事だったら「経費としてはだめだよね」、となる話ですが、「なんかさぁ、年末とかに学外で一緒に何か演奏やりたいよね~」という話になる時だってあるじゃないですか。そうすると、これは収入に関わる打ち合わせというように考えられます。

よくグレーゾーンとか言いますが、先ほどみたいに、仕事の打合せの食事だったら、ほぼ白ゾーンとして認められると思います。この感じでいくと、奥さんとの食事が黒ゾーンで、今の同級生との食事の例が部分がグレーゾーンって感じでしょうか。このグレーが、どれだけ薄いグレーか、濃いグレーかによって違うんですが、この辺のグレーを少しでも薄いグレーにするために、年末のコンサートの打ち合わせをしたとか、少しでも具体的に書いたりするっていうことです。

もちろん書いたらそれだけでいいというわけではなく、なるべく打ち合わせをしたなどと書いた上で、それが本当にコンサートとして実現したら、打ち合わせとこのコンサートが関連していますというようなこともあとから書き加えたりすると色がどんどん薄いグレーになっていきます。食事代の経費は結構難しいですが、このような感じで考えてもらえたらと思います。

ちなみに、やってもいない打合せを書いたりするなどの、嘘の記録とかは、論外ですよ(笑)

(学生1):《いつまで扶養に入れるかって年齢制限とかありますか?》

先生:年齢制限はないです。所得の金額次第です。

質問(学生2):作曲科の修士1年です。いくつか聞きたいことがあるんですが・・・

質問①:《勤労学生控除というのは事業所得者には関係ありますか?》

先生:勤労学生控除というのは、事業所得の学生にも関係あります。勤労学生控除というのは、所得の合計額を計算した後で引く、“所得控除”の中にある項目ですので、給与所得でも事業所得でも、控除できます。

質問②:《勤労学生控除と扶養家族の関係はどうなりますか?》
先生:勤労学生控除というのは、そのシステム自体が本人用なんです。なので、勤労学生控除を受ける受けないとは別の話として、扶養に入れるかどうかというところは令和元年までは“所得の合計額が38万円以下かどうか”というところで決まります。本人は勤労学生控除を引いているけれど、親の扶養に入れないという人もいます。連動はしていないので別々に考える必要があります。
質問③:《国民年金とかは、扶養と関係ありますか?》
先生:扶養に入れるかどうかというのは、所得の合計額が38万円以下かどうかで決まります。確定申告書のレイアウトで言うと、左側の真ん中あたり、今年の申告書だと⑨で、ご質問の国民年金というのは、その下の緑色のところ、申告書の左下ですね、ここで登場するものなので、ここがどんなにたくさんあっても少なくも、扶養に入れるかどうかは、その前の段階で決まってしまっているので、直接影響はないということになります。

質問④:《扶養を外れた後にもう一度扶養に戻れますか?》
先生:できます。今年は扶養、来年は扶養じゃない、ということが可能です。手続き的にはどうするかというと、仮に【おたよりコーナー③】の日本一の音楽教室を作るんだ さんのように、お父さんの扶養に入っている人だったら、お父さんの年末調整の時に分かるように言ってください。お父さんが確定申告する方だったら、確定申告のタイミングで扶養か扶養じゃないかを言ってください。
質問⑤:《消費税は過去の年の売上によって、かからない場合もありますよね?》
先生:そうですね、消費税というのは、ある年の売上が1000万円を超えた場合に、翌々年から税務署に納税するという決まりになっています。ちなみに途中で1000万円以下になったら、またその翌々年は消費税を納税を収めなくてもよくなったりします。

どうして納税をしなくてもいい人を定めたのかという話をしますね。

仮に一年間に一度だけ、10000円で演奏の仕事をして、1000円の消費税を受け取ったとします。

でもこれ、その1000円を税務署にわざわざ収めるのって、面倒ですよね?なので、小規模な事業者は、消費税の計算や納税はしなくてもいいですよと決めたんです。

じゃあせっかくなので、これに関係する、よくある消費税の誤解の話もしておきましょう。

さっき話したような、消費税を納税しなくてもいい事業者さんには、「あなたは税務署に納税をしないんだったら、私からも消費税をとるのはおかしくない?」という、お客さんの心理が働くのって、なんとなくわかりますか?

これが“消費税を納税しない事業者は、消費税をとったらだめだ”という誤解につながったんだと思います。そしてそれは、今も多くの人の中に誤解として残り続けているようです。

でも、今日のみなさんは、“音楽の仕事には消費税がかかる”ということを知りました。

そしてそれは、売上が1000万円以下だろうが何だろうが関係ありません。

誤解に惑わされずに、堂々ともらってくださいね。

質問⑥:《コンクールの賞金とかはどういうものとして取り扱われますか?》
先生:コンクールの賞金というのは、基本的には一時所得という所得に入ります。事業所得とも給与所得とも雑所得とも違います。一時所得というのは、実は控除額というのがあって、コンクールの賞金が仮に800,000円だとして、もし経費が100,000円とかかかっていれば、まずそれが引けます。そしてそのあとで、500,000円が控除できるという決まりがあるのです。この時点で、80-10-50=20万円ですよね。

で、さらに、その金額を2分の1にしたものが、一時所得になります。この方の場合、10万円ということです。

経費があってもなくても、必ず50万円が控除できるので、50万円以下の賞金収入の場合は必ず一時所得がゼロになりますし、源泉所得税も引かれません。

たまに賞金を獲った人には、あまり課税してはかわいそうだということで、かなり手厚く控除してるんです。

逆に、たまにではなくて、事業として継続して音楽活動をしている人については、たまたまコンクールで賞金をもらった場合などでも、「賞金をもらった時も事業所得にカウントしてくださいね」というのはあります。これは本当に度合いによってまちまちなので、私たち税理士に詳しい状況を相談してもらうのが無難かもしれないですね。

質問⑦:《この賞金の一時所得と扶養とは関係あるんですか?》
先生:あります。結局、扶養というのは、どんな所得であろうが、所得の合計額が38万円以下というところで決まるのです。

なのでもし200万円の賞金が入った年は、2000000円から500,000円を控除してから2分の1をかけると、一時所得が75万円になって、38万円を超えますので、扶養から外れるということになっちゃいます。

でもきっと、扶養に入るよりも賞金をもらう方がうれしいですよね!

質問は以上でしょうか?

また何かありましたら、いつでも遠慮なく聞いてくださいね。

では本日はここまでとします。ありがとうございました。

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