「フリーランスアーティストを目指すために」(第7回特別講座「若手音楽家のためのキャリア展開支援」)
10. アートビジネスの可能性①:科学サイエンス
進化論って聞いたことありますか?ダーウィンの自然淘汰とか。これも興味のある人は漫画とかでも一般解読書とかで勉強してみると面白いと思います。
ここまでの社会で音楽や芸術はなんで残ったんですか?という話になります。無駄なものは全部消えていくはずです。何かしら人間の生存とか本能的なものに根付いているからこそ生き残っているわけで、もっと科学的に音楽がきちんと解明されてくると芸術の意味というのが、今よりちゃんとした形でもう少し分かってくると思います。
そうすると、人々の認知が変わってきて、そこに色々なお金が流れていくと思います。
私みたいな投資家は、ここに張っておけばお金がつくと思ったら絶対張ります。そういうことが起きてくるのが、もう少し先かなと思います。今すぐじゃないかもしれませんが、そんなに遠くないと思っています。
11. アートビジネスの可能性②:技術テクノロジー
このスライドの右側の2つの画像で説明したいと思います。
人間のテクノロジーって進んでいて、私はテクノロジーに投資をする仕事をずっとしていたんです。
右側上の写真は私が撮った写真です。7年前の時点でこの精度なんです。研究室に入ったらこの子がいて、動いてたんです。本当に人間の女の人が柔らかく動くような感じで、本当に人間がいるのかと思いました。
右下の写真は、自動運転の写真です。
私の友達のインド人が、シリコンバレーのGoogle会社で、自動運転の開発責任者で、3年前から自動運転は出来ていると言っていました。
しかしながら、政府が認可してくれないからできないんだということをずっと言っています。
本当はテクノロジーは進んでいるのに、人間が規制で止めているだけということは世の中に山ほどあります。
左の図を見てもらうとわかるんですが、人間のテクノロジーって加速度的に進んでいくんです。線で進んでいくのではなくて、指数関数的に進んでいきます。気が付いたらとんでもないことになっているのが、人間の技術なんです。この100年で何が変わったというと、色々なことが変わっていますよね。
ちゃんとこの技術を利用していくことで、経済的に合理性が成り立つと思います。している人が損しない状況になったり、突然そういうことが起こるので、常に私みたいな投資家は考えておかなければいけないです。
となると、音楽がいつ脳科学の治験で把握できて、世の中のマインドセットが変わるかということですよね。
いつも音楽教育について話しているんですが、今よりももっと財界人のお子さんの家庭教師に音楽が絶対ついてくると思います。それくらいクリエイティブな脳が必要とされてきます。
碓井先生:ジュリアードの作曲を出た人とかは結構証券会社にスカウトされたりします。それは作曲の理論とファンド構成が一緒だからです。あと私たちは舞台慣れをしているので、賭けに強いということで、スカウトされるようです。本番ほど怖いものってないじゃないですか。暗譜忘れた瞬間とか。このようなヒヤっとした瞬間が普通の人にはできないということもあります。
石崎先生:あともう一つ付け加えると、東大の理系とかだと論理を積み重ねていくことって多分世界のトップクラスのレベルだと思います。日本人はこれが得意です。先ほど世の中は今答えが無くなっていると言いましたが、1+1+1+1…で10を作ることにあまり意味がなく、普通の人が考えたら、なんでAからいきなりBになるの?ということが世の中って結構あるんです。
突然の発想ですね、それをクリエイティブとか発想とかイノベーションと言うんですが、もしかしたら東大生より皆さんのほうがそれができるかもしれないと思っています。そういう左脳的な発想と右脳的な発想をうまく混ぜていくというのが、これから主流になっていくと思います。ヨーロッパではすでに主流ですし、インドでもすでにそうなっています。インドは英国の占領下にあったので、そういう貴族の文化があって、芸術教育というのは入り込んでいます。
碓井先生:今日本の普通の音楽教室で脳活とかもしていますが、そのレベルではなくて、アメリカとかロンドンとかに留学して、ちゃんと論文を書いて、そこまでの資格を取って帰ってくると本当に世界中で引く手あまたになると思います。それプラス藝大レベルの弾ける技術があれば、もう敵なしと言えますね。
石崎先生:皆さんも東大の友達とかと一緒に何かやればいいじゃないですか。東大生と藝大生がセットで教えますみたいな感じで。私はブラントになると思います。
12. アートビジネスの可能性③:アジアの時代
残念ながら2050年の世界を表したとき、ほとんどの統計を見てもこうなっています。
たまにインドが中国を抜いたりしているんですが、日本は中国の10分の1です。かなり差がつくので、私たちが後輩に良く言うのは、このサラリーマン生活をすると、あなたが良いと思って務めた日本の大手企業は中国の会社になっていますよと。これから中国人のために働く日本人が増えるんです。
碓井先生:日本のKAWAIがあるでしょ?今KAWAIは3分の1は香港資本です。今ここは買収防衛に走ってて、中国企業にならないようにしています。でも時価総額が200億切っているのですごく安いんです。200億円で世界第2位の企業が手に入るということはとても安いです。今KAWAIは色々なことをしていますが、その下に出版社もあるので、結構厳しいのかなという状況です。
石崎先生:でもそういう事例というのは多発しますよ。音楽業界もおそらくそうなってくると思います。碓井先生が定期的に言っているんですが、コンクールの審査をしていて中国人がすごいって。
碓井先生:中国人や韓国人でもアメリカ国籍を持っている人が強いです。彼らのバイタリティーとアメリカンセンスとかヨーロピアンセンスとかお金があるとか…
私が学生の頃は中国とか韓国はそこまで出てきてなかったので、ヨーロッパの先生とアメリカの先生は日本人が一番という風なお話をされていましたが、この20年でアジア諸国、其の中でも中国や韓国がかなり出てきました。
ベルリンフィルはツアーで日本を外すことが多いです。日本はスポンサーとかお金がつくことが少ないので、最初からリストに入っ ていないです。そういうことが起きています。これが起こっているということは、今皆さんの仕事にとても影響が出ているということですので、私たちの世代が真剣に考えていかなければいけないんですが、やはりみんなで考えないと世界から取り残されてしまうことになってしまいます。これは本当に頑張らなければいけないことの一つだと思います。
石崎先生:全く同感です。経済の世界も同じようになっていて、ハーバード大学なんで半分くらい中国人とインド人ですからね。なぜなら結局経済力があるんです。英才教育でつぎ込むとそうなるんです。
ハーバードの審査基準は東大よりはっきりしていて、まず高校の成績・内申点が良いこと、あと先生の推薦書がきちんと書かれていることと、あとは自分のエッセイです。
高校時代にこういうことをしてきて、こういう考えを持っていて、こういう社会を実現したいからハーバードに入りたいということを言って、独自な生き方の人をいかにも評価しそうな感じなんですけれど、あまりにセンター試験のレベルとかで足切りになるレベルや内申点が高かったりとか、そういう経験をしたりエッセイを書くのでさえ、お金でどうにかできてしまうんです。中国人は、日本が思っている以上に10倍くらい教育のお金をつぎ込んでいると思います。
それくらい教育の争いが高いです。インド人ももっとすごいです。倍率がすごいんです。MITよりIIT(インド工科大学)で入る方が難しいくらいです。なので、こういうことをしている2か国がさらに大きくなって、20何億人といるわけですよ。どうなっていくんだと思ったときに、私は、この国の人と仲良くなった方が良いんじゃないかと思って行ったんです。これもひとつ合理的な考えですよね。
碓井先生:私は中東に良く行くんですが、ドバイだとかカタールは移民文化ですよね。そこに音楽教室もたくさんあるんですが、そこの音楽教室の上司というのは、大体ジュリアードとかマンハッタンとかで勉強して博士号を持った中国人か韓国人です。その下で他の音楽家が働くということになっています。
これがもっと時間が経ち、日本に来たときに、日本の組織がそうなっていく可能性もありますよね。このような博士号を持ったような人が来て、外国資本の音楽教室とか音楽教育とかだとそういう人たちしか評価されないですから。その下で私たちが働く。しかも給料がよくない。ということがもしかすると数年後に始まるかもしれないと、私は結構危機感を持っています。
中東もそうですが、カンボジアとかも行って見ていますが、そういうところでも東南アジアの音楽家の人達が同じように頑張っています。能力やロジックができるので、そこで買われるということになります。そうすると、藝大生や桐朋など、これだけ努力しているのになぜだろうと思うでしょ。でもこれが通用しないのがこれからの世の中ですから、そこを見据えて、勉強や留学・行動をしていかなければならないと思います。
石崎先生:私は留学は1年でもした方が良いと思います。私と碓井先生は20歳の頃留学の経験をしているんです。これで人生が変わりました。その時に多少お金がかかっても、多少日本で研磨する時間が減ったり、日本でネットワークする時間が減っても、それは1年留学して得た知見の広がりとか、グローバルな感覚とかに比べたらほんの小さなことです。
東大の医学部や藝大生とかに多いと思いますが、他の分野の人たちとあまりからまない傾向にあるような気がします。ただ、スコット・ペイジという先生がネットワーク理論の研究をして、面白い本を書いていますが、多様性は力があるということを論じていて、専門家1人に答えさせるよりも、色々な一般人10人を集めた方が、クリエイティブだったり、答えの制度が上がるということです。多様な環境において、発揮される力は大きいです。
シンガポールはグローバルですよね。白人がいて、中華系もいて、マレー系もいて、インド系もいて、こういう社会で育つと、色々なものが見えてきて、こうしなきゃいけないというのがないです。
社会主義で国民選挙で政治家を選べない国ですが、それでも教育レベルの高い国です。多様性という意味ではアメリカなんかは最たる例ですね。
そういう意味で、多様性を重んじるというのも、藝大の外で色々な人と話すのも良いですし、とにかく日本の外に出て、色々な人と交流してみると、また違う世界が見えてくるかもしれません。
音楽で得た力が、ビジネスとか社会でより稼ぐ力に使えてくるとか、新しいビジネスをやるきっかけになると思います。
碓井先生は社会でネットワークやビジネスとかをうまく使いながら、ピアニストという立場を大事にして活動して、国際交流や色々な企業や政府の方とかと仕事しています。演奏家だけというのではなく、私はもっと皆さんの能力を他でも使ってほしいと思います。こういう講義に来てくれる人なんて、もともとこういうマインドがある人だと思うんですが、こういう人が大多数になって、藝大から出る起業家が増えると面白いなと思います。
碓井先生:皆さん、日々練習するとか、ステージに立つ度胸もあるので、できると思います。普通の人よりはるかに経験を積み上げてきているから、そこに自信を持ってもらいたいなと思います。