「フリーランスアーティストを目指すために」(第7回特別講座「若手音楽家のためのキャリア展開支援」)
3. 留学と飛行機の出会い・利用方法
留学について
皆さんのなかで今留学を考えている人はいますか?
クラシック音楽を演奏するなら、私は絶対にヨーロッパに行かないといけないと思います。私たちが演奏している西洋音楽は主にヨーロッパのものですよね。やはり本場に行って学んだ方が手っ取り早いです。鮨職人を目指す海外の方はどうやるのがてっとりばやいでしょうか?日本にきて勉強するのが一番ですよね。それと同じです。
私は自分自身で海外に行ってその事を体感しながら藝高から芸大にもいきましたが、大学3年生のときに飛び出しました。ヨーロッパで勉強してよかったと思っています。また復学しましたがそれもよい経験になりました。客観的に冷静に日本の状況をみれます。
こういうときに、皆さんが良く言うのは、「留学したら日本の仕事なくなるんじゃないですか?」とか「日本のコネクションなくなったらどうしよう」と言いますよね。私が留学したときは、1999年から2年半ですが、11往復しました。1・2ヶ月に1回帰ってくる形で、それで日本の演奏会もしながらヨーロッパに留学するというスタイルをとりました。今までで一番多いときは、日本からヨーロッパを月3往復しました。平均では1・2往復はしています。今思えば、20代のときに沢山往復したので、こんな生活が平気になったのだと思います。
飛行機での出会い・利用方法
オーストリア航空に乗ると、音楽家が実に多い!!沢山の関係者が乗っています。そうすると、そこで隣同士に座ったりして、仕事が始まったこともあるんです。
往復で20万円30万円かかるときもあり、もったいないな?!とその時は思ったとしても、飛行機の中で仕事が発展したら、その何十倍にもなるかもしれないチャンスもあります。全ての事には無駄がないということを覚えていてほしいです。
質問(学生):「その飛行機はビジネスクラスですか?」
碓井先生:学生時代や20代は、エコノミークラスでした。
エコノミークラスにも関係者はいるし、ファーストクラスにもいます。
質問(学生):「ご年齢で大体どのようにクラスをシフトしていきましたか?」
碓井先生:私は20代はエコノミー、30代はビジネスというようにしてきましたが、今はLCCも含めて全てのクラスを使います。乗る飛行機を選ぶのも面白いと思います。羽田発深夜便のフランクフルト線も関係者が多く乗っています。一番多いのは、オーストリア航空のウイーン線とANAのウイーン線です。絶対業界の人が乗っています。
飛行機での色々な人との出会いは、逆にチャンスと若いときは捉えていましたね。いまはよく寝ていますが(笑)
ビジネス系の方々によくお会いしたのは、ロンドン線とかニューヨーク線のビジネスクラスでしたね。偉い人や色々な人が乗っているから、そこで名刺交換をして、色々な話が始まったという話もあります。
日本でいうと、東京―大阪路線のJALのファーストクラスが同じような感じです。ANAのプレミアムクラスも政治家関係が乗っています。お名前はいえませんが。そこでわざわざ話しかける必要はないと思うのですが、こういう人たちが、こういうパターンで、飛行機に乗っているんだということが分かると面白いと思います。
また、今年4月にモスクワにロストロポーヴィチ国際音楽祭という音楽祭のために、横浜シンフォニエッタの奏者45人と共に飛びました。楽器に優しい航空会社もあるので、皆さんはこれも覚えていた方が良いと思います。楽器に対して日本系は総じて厳しいです。アシアナ航空やエールフランス航空はほぼノーチェックです。そういう情報もみなさんと共有すると良いと思います。なぜなら、弦楽器の人は自分の楽器を防衛しなくてはならないですよね。荷物棚に入れる時のノウハウも必要だと思います。今はヴィオラケースも機内持込みケースもできたので、そういうものを活用していけば良いかもしれないです。
そして、飛行機に乗る際に、一つの航空会社を使い続けると、上級会員になりますので、一つ上のステータスになると、楽器のことはほとんど言われなくなります。この一つ上のステータスを取るというのも必要かもしれません。