確定申告と還付申告【入門編】(若手音楽家のためのビジネス・マネジメント)

2.雑所得の経費とは?

音楽活動に要した出費を経費として計上することができます。音楽活動に関わる経費として、たとえば下記のものが考えられます。

  • 音楽活動で着用する衣服、ステージ衣裳代
  • 打合せ、情報交換、交流、接待での飲食代、茶菓子代
  • 作業場としての一部家賃(作業部屋の面積割合や使用時間割合を勘案します。これを按分と言います)    例)家賃月額7万円 × 毎日8時間練習(8/24h)× 面積10/40m2 = 0.58万  12ヶ月だと約7万
  • 水道光熱費(同上)
  • 交通費(事業にかかわる移動:電車、バス代、タクシー代、航空チケット代など)
  • 電話料金やインターネット料金(事業にかかわる時間計算=按分も忘れずに)
  • レッスン代
  • リハーサルなどの会場費
  • 楽器輸送費
  • 文具代
  • 楽譜・図書費
  • CD代
  • 演奏会チケット代
  • 楽器代
  • 楽器ケース代
  • 楽器修繕代
  • 楽譜や資料用の棚代
  • パソコン代(10万円未満であれば一括経費が可能)
  • ソフトウェア代

 ポイント

詳細が分かれば、領収書でもレシートでも大丈夫です。詳細とは、「(宛名)、日付、金額、領収書の発行者情報、内容」を指します。むしろ領収書を書いてもらった場合は、購入物の明細が書かれていない場合が多いので、後でメモしておくなど詳細が分かるようにしておきましょう。関係のない物も一緒に購入しているレシートの場合は、該当項目をチェックし、やはりメモを残しておきましょう。領収書orレシートいずれも、仕事との関連性(イベント名、相手先、目的など)をメモしておきます。

物品購入時は、領収書orレシートを載せた上で写真を撮影し、保存しておくことをお奨めします。(→税務調査で必要になったときに、さっと説明できるように)項目毎の台帳をつける方法もお奨めします。

交通費はSUICAの明細でも大丈夫です。該当項目にマーカーチェックした上で、目的・金額などを別途メモして、5年後でも分かるようにしておきましょう。

インターネットでの買い物の場合は、取引内容確認のメールや、取引画面のプリントアウトも領収書の代わりになります。会社によっては、アカウントサービスで「領収書」が表示されるところもありますのでよく確認してみましょう。クレジット明細書も大丈夫です。該当項目をマーカーチェックなどしておきましょう。

嘘の申告や、不正確な申告をすると、重加算税や以降、青色申告が認められなくなるなどの重いペナルティが待っています。くれぐれも精錬潔白な申告に勤めましょう。

 

青色申告では事業の手伝いをしてくれる家族に支払う給料など、経費の範囲がより広くなっています。個人事業主として事業所得で申告する!という段階になった暁には、1冊参考図書を購入し、責任をもってしっかり確認しましょう。

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3.所得控除とは?

所得控除とは、負担を軽減するための各種控除です。様々な控除がありますが、皆さんが関係しやすいのは下記の9点でしょう。(国税庁ウェブページの説明へ)

  • 「基礎控除」: 誰もが38万円の控除を受けられます
  • 「医療費控除」: 総所得金額が200万円以上の人は、保険などの補填分を差引き、実質的に本当に出費した医療費から10万円を引いた金額、つまり10万円を超えた医療費分が控除されます(最高200万円まで)。生計を一つにする家族がいる場合には、家族全員分を合算することができます。 総所得金額が200万円未満の人は、その5%の金額を引いた額が控除されます。
    例)100万円の場合:100×5%=5万円を超過する医療費分が控除されます。 医療費控除を受けるには、明細書類を提出する必要がありますので、Webなどで確認しましょう。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「セルフメディケーション税制」:病院に行かずに市販の薬で病気を治そうとする場合に、医薬品等購入費の合計額のうち、1万2千円を超える部分の控除が受けられます(最高8万8千円まで)。平成29年1月からスタートした新しい支援です。ただし、上記の医療費控除との選択になり、どちらかしか選べません。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「社会保険料控除」:健康保険や年金保険の支払者は、支払分の控除が受けられます(家族分も同様)。社会保険料には金額の上限がありません。国民年金の前納・後納分でも含まれます。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「生命保険料控除」:生命保険料控除は最高12万円までです。生命保険料控除には3種類(一般、個人年金、介護医療)があり、それぞれ上限額があります。新旧の契約で異なるなど、控除額の算出は素人には難しいのですが、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で自動計算されます。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「地震保険料控除」:地震保険料控除は最高5万円までです。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「寄付金控除」:国や地方公共団体などに寄付をした場合に一定の金額を控除することができます。外国や外国団体への寄付は控除の対象になりません。(国税庁ウェブページの説明へ)
  • 「扶養控除」: おそらく皆さんの多くは、皆さんではなく親御さんがこの扶養控除を受けておられると思いますので、ここでは割愛します。いえ、自分が家族を扶養しています、という方はどうぞキーワード集の「扶養控除」をご覧ください。
  • 「勤労学生控除」:仕事をしている学生で、所得(「1.所得とは」の図の(c))が65万円以下の場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。その他の条件など詳しくは国税庁ウェブページをご覧ください。(国税庁ウェブページの説明へ)

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4.税額計算とは?

所得税の税率は、課税所得の金額によって7段階に区分されています。たとえば課税所得(「1.所得とは」の図の(e)部分)が195万円以下の場合では5%となります。(国税庁ウェブページの所得税の速算表へ)

(例)課税所得金額が300万円の場合 基準所得税  300万円 × 10% - 控除額97,500円 = 20万2,500円 復興特別所得税20万2,500円 × 0.021 = 4252円 → 4200円(納税確定額では100円未満が切り捨て) 所得税は合計20万6700円に

5.確定申告をするには?

確定申告の期間は、毎年2月中旬~3月15日です。下記の書類を用意して、e-Taxでの送付or郵送をするか、税務署に持参しましょう。 ※税務署に持参する際には、通帳の口座情報や印鑑も忘れずに。

① 複数の給与所得、雑所得+給与所得、雑所得のみの場合
☆ 確定申告書・源泉徴収票・支払調書(必ずしも添付が必要なわけではありません。キーワード集を参照)・控除書類(提出が必要な書類については国税庁ウェブページを参照)の4点

② 白色申告
☆の4点
+収支内訳書

③ 青色申告(10万円控除、65万円控除)の場合
☆の4点
+青色申告決算書

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6.還付金の申告をするためには?

還付申告とは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税額(源泉徴収分など)の還付を受ける制度です。これまでに申告をしていなかった場合、対象期間の翌年1月1日から5年間、申告することが可能です。つまり平成26年分は平成31年(2019年)12月31日まで申告することができます。
申告後、0.5~2ヶ月ほどで税務署から還付金が振り込まれます。

まずは自分が上記「1.所得とは?」のどのパターンに当てはまるのか、さらに自分の控除額や経費を確認してみましょう。 (納税義務がある場合には、毎年、確定申告をする必要があります。納税義務者が確定申告期限までに申告をしていなかった場合、重いペナルティが課されますので注意しましょう。)

★還付金申告の際、税務署に持参するもの(e-Taxでの送付or郵送も可能です)

  • 確定申告書(税務署に置いてあります。あるいはWeb上でも作成できます(国税庁の「確定申告書等作成コーナー」へ)
  • 源泉徴収票
  • 支払調書
  • 控除書類

雑所得が関係する場合、経費一覧を提出する必要はありませんが、経費総額を申告する必要があります。
 根拠となる領収書類を整理し(5年保管義務あり)、一覧にしておくことをお奨めします。
※通帳の口座情報や印鑑も忘れずに。

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